1人あたりGDPの国際比較 (2016/12/24)

 

 

一昨日、内閣府が1人当たり名目国内総生産(GDP)はドル換算で前年比9.6%減の34522ドルで、OECD加盟国35カ国の中で20位となったと発表した。つまり、日本人の生産性は先進国と比較すれば相当低いと言うお話である。

 

GDP、すなわち付加価値とは人件費、利息、営業利益等の合計額なので、労働生産性が低いと言うことは、働いた割には作り上げた商品やサービスの価値が上がらなかったということに他ならない。

 

別に日本の労働者が皆さんダラダラと仕事をしているというわけではない。一番の原因は、日本の経済構造が非常に非効率な部分を多く抱えている点である。日本では、生産性の高い産業は製造業に集中し、一般に非製造業の生産性は低い。とりわけ、農業、小売業、サービス業の生産性が低い。

 

なぜそうなったのか。製造業は国際競争に晒され、徹底的に生産性を高め、高付加価値な製品を生み出すように鍛えられてきた。そもそも、そうしなければ生き残れなかった。一方、生産性が低いのは、補助金頼みの産業(農業)、長きにわたって続いたデフレマインドとその中で発生した価格競争の中でしのぎを削る小売業や外食産業である。

 

加えて問題なのが、日本の社会がチャレンジを嫌い、現状を維持することで満足してしまっている(これを安定志向という)。その一方で、新しいことを始めようとすれば、何かと理由を付けて、やらないことを正当化しようとする。金儲けを悪とみなし、所得の高い者を妬みの対象とする風潮もある。税金の値上げになると、「金持ちから取ればいいじゃないか」という意見が出てくるのはその典型である。

 

ちょっと話はそれるが、先日、統合型リゾート(IR)法案(カジノ法案)が可決された。国会審議を巡っては、依存症問題や博打を民間に開放することを理由に反対の立場を取る議員も多くいた。しかし、現在の日本中を見渡せば、あちらこちらで博打場が大手を振ってまかり通っている。競輪、競馬、競艇、そしてパチンコパーラー。日本では、パチンコは娯楽であると思っているが、国際的な常識で言えば、あれはラスベガスのスロットルマシンと同じ賭博である。

 

そもそも、依存症や博打を倫理観で議論するならば、競輪、競馬、パチンコを何とかする方が先だと思うが、その様な話はどこにも出て来なかった。ただただ、問題点を挙げ連ねて反対するだけである。問題点を克服して、どうやればうまく行くかという発想はどこにもない。

 

別に私はカジノに大賛成というわけではないが、自治体が責任を持ってやるというならば、やらせてみればよい。うまく行くか、失敗するかは彼らの技倆次第。うまく運営して、雇用を確保し、そこに付加価値を作り上げる事が出来れば結構な話である。

 

付加価値生産性(労働生産性)の話に戻ろう。少なくとも今の若い人達が雇用や将来の人生設計に不安を持たなくても良い世の中にするには、経済的な付加価値を上げなければならない。それは、既存の社会経済構造を変え、新しい産業を興さねば達成できない。

 

幸せはGDPでは計れない、カネだけが全てではないと言うのは良いが、収入が不安定で将来の人生設計など考えられないという若者の悩みはもっと深刻である。

 

 

 

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