中国の憲法改正案 (2018/2/28)
2月25日、中国共産党は3月5日から始まる全国人民代表大会(全人代)に憲法改正案を出すと発表した。改正案の要は、これまで2期10年であった国家主席の任期制限を廃止することである。習近平が終身国家主席になることが可能となる。
この改正案は1月19日と26日の党中央委員会において既に決まっていたようである。全人代は、建前上は最高決定機関であるが、実態は中央委員会の提案を追認するだけのセレモニーの場でしかない。憲法改正はこのまま決まることになろう。
国家主席の任期制限と年齢制限が導入された理由は、毛沢東の末年の混乱、いわゆる四人組と紅衛兵騒動の教訓であった。毛沢東の後、国家の立て直しを図ったケ小平が決めたルールであった。ケ小平は一個人に強大な権力が集中することを懸念し、共産党と国家の役割の分離と、国家主席の後継者問題を解決すべき必要性を強く主張した。
一方、習近平は、毛沢東以後、これまでの国家主席に比べ極めて独裁的な政治を進めており、党と国家の区別をなくし、自らの後継者問題も棚上げにしてきた。
憲法改正により、共産党の役割がより強調され、党と国家の区別がさらになくなる。習近平は、これまで急速な経済成長を成し遂げた中国モデルが混乱に苛まれている民主主義を凌駕していることを見せつけようとしてきた。衆愚政治よりも有能なリーダーに導かれる独裁政治の方が優れているというわけである。
しかし、終身国家主席が国を動かし、かつ共産党と国が同一化した国家が、果たして民主主義を越えるモデルになるのかどうかはわからない。