中国の経済成長率 (2019/3/10)
中国では、3月5日から全国人民代表会議(全人代)が開催されている。
全人代は日本でいえば国会にあたるが、実態は習近平政権の成果を形式的に承認する機関に過ぎず、ここで反対意見や批判が出るわけではない。よって、英語ではゴム印(rubber stamp)の役割と呼ぶ。つまりゴムのめくら版を押すという意味である。
国内外を問わず、全人代のニュースで一番の関心どころは中国の今後の成長率である。李首相は2019年のGDP成長は6〜6.5%と、昨年の6.6%から下がるだろうと述べている。
このGDP成長率、中国の統計は相当サバを読んでいるという話は昔から耳にするところである。
今週のエコノミスト(The Economist)誌に面白い記事が出ていた。シカゴ大学と香港大学の経済学者が出した論文で、2008年から2016年にかけて、GDP成長率が年2%ほど過大評価になっていると推定している。2016年ではGDPが16%粉飾され、1.5兆ドル(165兆円)水増ししてあるという。
水増しの一番の理由は地方政府である。
中国の政治は中央集権であり、地方政府は他よりも自分を大きく見せたい。計画を上回る経済成長を遂げたと、中央政府に対してアピールしたいという願望が常に働く。遼寧省や内モンゴル自治区で政治腐敗が摘発された際に、当局はGDPデータに水増しがあったと認めている。
中央政府は、地方から上がってくる統計データを集計して国家の数字を作るので、GDPの水増しがどんどん溜まっていく。中央政府もそれを知っているので、その他の経済指標を使って修正しようとするが完全ではない。
面白いのは、個人消費の数字は水増しされていないようであるが、主に工業生産や投資の数字が水増しになっているという。
そういえば、胡錦濤政権の時代の首相であっただろうか。GDP統計は信用していないので、工業統計を参考にしているという発言があったと記憶する。もっとも、工業生産の物量データが水増しされていたならば、私には結局同じ事であるように見えるが。
さて論文の結論は、実態のGDP数字は政府発表よりも低く、投資も政府発表値より低い。一方、投資のリターンも政府の発表よりも低いという。半面、個人消費がこれからの経済成長を引っ張っていくので、まだまだ中国の経済成長に力強さはあるという。
中国経済が成熟期に入ったことだけは事実なのだろう。