車選び (2012.1.18)
若者の車離れが言われて久しい。が、私の年代であれば、車への関心はまだある。1970年代に青年期を送った当時、やはり車は憧れの対象の一つであった。
今でも、仕事上、車は必需品であり、5年ごとに買い替えている。今使っている車がもうすぐリース期限を迎えるので、次の車を何にしようかと迷い始めたところである。いくつかのディーラを廻り、試乗をしてみると、この5年間で車も大きく進歩したことがわかる。今の時代、やはりエコロジーがセールスポイントになっており、各社、燃費競争である。スポーツカーですら、環境にやさしくなければ売るのは難しい。
私の場合、使いやすさ、燃費、お値段を考えると、高級車や大きな車は対象とはならず、1500〜2000cc位の小型車が対象となる。欧州でいうところのCセグメント、あるいはアメリカでいうところのコンパクトかセミコンパクトカーあたりである。
ハイブリッドや電気自動車ばかりでなく、従来型のエンジンを踏襲するが、アイドリング停止機能、燃料の制御で大幅に燃費を伸ばしたものが出ている。
ちょっと気になった車は、スバル、フォルクスワーゲン、マツダであった。トヨタのプリウスも面白いと思ったが、内装を見た限り、あまり使い勝手がよくない。運転席と助手席の間が背の高いコンソールボックスで遮られており、ヨイショトまたいで助手席側から降りるという芸当ができない。日本の駐車場は狭く、運転席側を壁ぎりぎりに止めると、助手席側から降りざるを得ないことがしばしばあり、私には重要な要件である。
ワーゲン・ゴルフは、燃費を向上させるためにエンジンをダウンサイジングし、トルクを稼ぐために過給するという面白い機構を持つ。かつてのターボチャージャーが馬力追求だけの手段であったことを思い浮かべると、隔世の感がある。自動変速装置も日本で使われるオイル・トルコン、あるいはベルト式と異なり、二枚のクラッチを使ってギアを自動的にシフトアップ・ダウンするという独特の設計思想を持つ。この辺りはドイツ車の面目躍如である。欠点は、日本でのワーゲンの価格は非常に高い。いや、むちゃくちゃ高い。アメリカ市場では、ゴルフはカローラと同じであり、価格帯もぶつかっている。なぜか、日本ではワーゲンは車格が高いと思われており、マーケティングの上で、日本車の中型車にぶつけている。
ただし、車両価格は高いが、私の場合、リース契約となるので、その見積もりを取ると、日本車とあまり変わらない。内訳を見て分かったことは、リース終了時の残価設定が相当高く、リースの金利がきわめて安いことにあった。つまり、車両価格は確かに高いが、残存価値も高いので、償却分はそれほど高くはないということになる。金利が安い点も、車両で利益を出すのか、金融で利益を確保するのかという、販売戦略の違いなのだろう。
マツダの新エンジン、スカイアクティブは相当面白い。マツダは資金力でトヨタとは正面から競争できないので、ハイブリッドの開発は諦め、既存のエンジンとトランスミッションを改良することで、燃費と走行性能を追求し、それを実現している。1980年代末期のバブルの頃までのマツダは、ロータリーエンジンを除けば、技術に特徴がなく、正直なところトヨタや日産のはるか後塵を拝していた、というのが私の印象である。バブルがはじけた後、実態としてフォードに吸収され、リーマンショックで、フォードがマツダ株を手放すという経緯をたどった。フォード傘下に入ったころから、マツダは車の外装デザインやエンジン開発で着実に独自性を出してきた。アイドリング停止と燃焼系統の改良、そして新しいトランスミッションで動力性能を損なうことなく、大幅に燃費を向上させた今回のスカイアクティブの技術はその答えの一つであり、マツダは車メーカーとしての市場シェアは低いが、魅力のある車を作り出してきている。
スバルも水平対向エンジンと全輪駆動という独自の技術で勝負する、ある意味独創的なメーカーであるが、如何せん、セールスが弱い。販売員の対応はトヨタとは相当の開きがある。トヨタのセールスほどの迫力と根性があれば、もう少し車も売れるであろうが、と思っている。