「円安でも車の国内生産伸びず」—当たり前でしょう (2015/4/28)
先週4月24日付の読売新聞に、こんな記事があった。「14年度414万台・・・円安でも国内生産伸びず」
この414万台という数字が前年度比3.6%減であり、2年連続で減少したというニュースである。その分析は、「日本経済にとっては、円安の利点を生かし切れていない状況が続く」というものである。さらに、「円安は、価格面で海外勢との競争で有利に働くため、輸出の金額だけでなく、台数が伸びてもおかしくない」と付け加えている。
この記事を書いた読売の記者にどの程度の経済知識があるのか私は知らないが、この分析、最大の発行部数を誇る新聞にしてはお粗末すぎる。自動車産業はグローバル産業であり、もはや輸出を前提とした産業ではない。地域別に消費者ニーズを取り込んだ上で、市場が存在する場所で商品(車)を生産する。それが基本である。設計にあたっては、現地のデザイナーの意向が強く反映されない限り、その市場で売れる車は作れない。
そもそも為替などというものは、その時々の経済環境で大きく振れる。4〜5年ほど前に1ドル80円ほどであった為替は、現在120円近辺にある。4年前に比べれば、50%の価値が変動したわけである。車の生産設備は一度建設すれば、巨額の固定資産となる。2年、3年で振れ動く為替に対応して、生産拠点が変えられるわけではない。
喩え、為替に応じて、世界の生産拠点の稼働率を自由に変えることが出来たとしても、為替の変動に応じて工場労働者のレイオフと再雇用を繰り返すことが前提となる。それこそ、労働者をコストの掛かるモノとしか考えないアニマルスピリットである。
もう一つの例。マツダの経営は今やよみがえったといえるが、かつての円高の時代にはまさに青息吐息であった。国内生産に拘り続けた結果であった(それは必ずしもマツダの経営判断ではなく、当時の大株主であったフォードの意向であり、致し方ない事情があった)。その経験があったからこそ、北米の生産拠点としてメキシコ工場の建設に踏み切った。
読売新聞の記者さん、もうすこし経済を勉強して下さい。