日本は海外から高度人材を集められるのか (2022/7/6)
二日ほど前の日経新聞ウェブ版で、ロシアからの頭脳流失が30万人に及ぶという内容で特別記事が出ていた。言うまでもなくプーチンの圧政、とりわけウクライナ侵攻以降、先進国から経済制裁が掛かり、国内でますます言論統制が強まることで、高学歴な人々には、社会に希望が持てなくなった結果である。
そんなニュースを聞いても、多くの日本人には、ロシアの出来事は他人事でしかなかろうが、実のところ日本が置かれた状況も人を笑えた話ではない。
日経の記事には、日本の深刻な立ち位置を示すグラフが出ている(右上の図参照)。図は労働生産性をY軸、高学歴労働者に対する誘致指数をX軸に取ったものである。いずれの指標を取っても上位グループに入るのは、アイルランド、ルクセンブルグ、ノルウェー、米国、スウェーデン、オーストラリアである。一方、どちらの指標を取っても下位グループに入るのが、イタリア、日本、ギリシア、チリである。
この結果は、1人あたりGDPを見ても同じである(右下の図参照)。上述の上位グループに入る6カ国は、いずれも1人あたりGDPが5万ドルを超える(2019年)。労働生産性で最上位にあるアイルランドの1人あたりGDPは11万4000ドル、ルクセンブルグは8万1000ドルである。つまり、これら二カ国は日本の2倍から3倍の豊かさにある。
豊かな国は、なぜ豊かになれるのか?この疑問に対する答えは難しいものではない。世界中から能力のある人材が集まり、高付加価値な産業を創り出していくことで、富が生み出されていく。日本人に分かり易いのは米国だろう。IT産業は高学歴の移民に支えられている。高度な人材が世界からシリコンバレーに集まる。そこには厳しい競争はあるが、富を手にするチャンスがあちらこちらにある。
一方、日本を見れば、世界の成長から脱落し、何となく貧しくなっていくのではないかという、漠然とした不安を多くの人が持っている。給与を上げろと言っても、生産性が低いままで、付加価値も生み出せないのでは、ない袖は振れぬと言うことでしかない。
新しい付加価値の高い産業を興すには、日本国内の人材だけで出来るはずもない。日本の大学に海外から優秀な学生が集まり、さらに優秀な人材が日本で働く。そんな社会の活力が経済の豊かさを生み出す。それができない限り、日本の将来はお寒い限りである。