繰り返されるバター不足騒ぎ (2016/2/4)

 

 

バター不足は毎年繰り返される騒ぎである。今朝の新聞によれば、今年もバター不足は確実とのことである。

 

そもそもの理由は、国がバターの輸入を管理していることにある。ご多分に漏れず、役人が需給を管理して、挙げ句の果てに市場を混乱させただけの話である。

 

役人の説明は、バターの原料となる生乳を作る酪農家の規模が小さく、海外から安いバターが入ると経営が成り立たなく恐れがある、というものである。曰く、新鮮な牛乳を消費者に届けるためには、国内の生産者を守る必要があると、いつも耳にする既得権益保護の言い訳である。

 

この既得権者の中で最もうまい汁を吸っているのが酪農家、であるはずはない。生乳は指定生乳生産者団体制度により、10の地域ごとに定めた指定団体に売らねばならない。この指定団体は全て地域の農協が形成する連合会である。指定団体は酪農家から買い取った生乳を用途別に振り分け、価格を管理して、食品メーカーに売り渡す。農協、そこを支持母体とする政治家、そして天下り先を求める農水省の役人が利権の構造を作り上げる。

 

一方、バターの輸入は、農畜産業振興機構が実質的に独占する。いうまでもなく、ここは役人の天下り先である。ちなみに、農水省が発表した平成26年度の機構役員の報酬は最高額の理事長が1875万円(うち、ボーナスが4956000円、平の理事が1500万円(うち、ボーナス400万円)、計10名の役員が禄を食んでいる。(出所:独立行政法人農畜産振興機構の役職員の報酬・給与について)

 

また、実質的に農畜産業振興機構が輸入を独占と書いたが、これは関税の仕組みを使っている。アクセス輸入と割当分輸入の関税率は35%であるが、その他の輸入は実に360%である。一般輸入業者がバターを輸入することは不可能である。

 

まさに鉄壁の利権確保の仕組みである。

 

さて、生乳不足の話に戻ろう。役人と農協は、一生懸命既得権益を守り続けているが、お生憎様。そもそも生乳の生産は減り続けている。10年前に比べれば、酪農家の数は35%減少し、生産量は15%減った。これは、酪農家の高齢化と経営の悪化による廃業がもたらした結果である。

 

生乳は、言うまでもなく、まずは高く売れるところへと向かう。取引価格で言えば、飲料用向けが高く、バターのような加工品向けは安い。当然、集荷された生乳は飲料用に向けられ、余ったものが加工品に向かう。今起きていることは、加工品、つまりバター製造に向かう生乳が足りないというものである。バターの輸入を規制しても、生乳を作る酪農家の生産には影響しないのである。バター向けの生乳がそもそも足りないのだから、その分海外からバターが入ったところで、酪農家の生産には影響しない。

 

一方、この既得権者の利益は、消費者の不利益で賄われる。一般家庭ばかりではない。町のレストラン、ケーキ屋さん、パン屋さんは皆その犠牲者である。

 

バターだけではない。乳製品の自由化を進めても、酪農家が困ることはない。牛乳であれば消費者は当然新鮮なものを嗜好する。勿論、加工乳も入ってくるだろうが、逆に国産品は価格が高くとも、高品質という差別化ができる。酪農を守るというのであれば、市場経済で生き残れない零細事業を補助金と規制で生きながらえさせるよりも、本当に自立しようという生産者を助ければよい。それが健全な社会である。

 

 

 

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