『ビッグ・クエスチョン―〈人類の難問〉に答えよう』 スティーヴン・ホーキング(著) 青木 薫(訳) 20193 NHK出版

 

 

原本は『Brief answers to the big questions』。難しい単語は使っていないので、高校生程度の英語力で十分読みこなせる。そもそも、英語のKindle版が一番お安い。

 

ホーキング博士を知らない人はいないだろう。若くして筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発病しながらも、世界的な理論物理学者として名声を浴びた世紀の天才である。

 

いうまでもなく彼自身は凄い人であるが、そんな彼を支えて研究の場を与え続けてきた英国や米国の大学の先見の明と懐の深さにも驚かされる(私は、日本の大学にそんな対応ができるかどうか相当疑問に思っている)。

 

この本を通して、古典力学(ニュートン力学)、アインシュタインの相対性理論、マックスプランクの量子論、はたまたハイゼンベルグの不確定性原理などと難しい言葉が出て来るが、博士はこれらを数式を使うことなく一般の人にも分かりやすい言葉に替えて、宇宙の成り立ち、ブラックホールの謎、そして時空の歪みといった物理的な問題(big questions)に答えていく。

 

博士の魅力は、子供のような好奇心から物事を探求することに尽きる。

 

本の中では「宇宙は何処まで広がっているのだろうか」、「ブラックホールに落っこちたらどうなるのだろうか」、「タイムトラベルはできるのだろうか」、「人間は惑星の彼方にまで旅できるのだろうか」、「AIは人間を凌ぐようになるのだろうか」といった、子供達が聞いたらワクワクしそうな話をしてくれる。

 

最終章で書いているように、彼は皆が科学に関心を寄せることが必要であると説く。

 

もし、最先端の科学がエリート達だけのものになったら、それは人間の世界を暗く、疑い深いものにしてしまう。足下を見れば、すでに我々は核兵器、気候変動、爆発し続ける人口といった地球の将来に暗い影をもたらす多くの問題を抱えている。

 

人類は内向きに足下ばかり見るのではなく、地球を越えて惑星のレベルで人類が直面する問題を科学の目で考えよう。そんなお話しを、博士はしてくれる。

 

 

 

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