英国EU離脱の評論 (2016/6/27)

 

 

先週末、金曜日に決まった英国のEU離脱の国民投票結果は、世界中に大きな衝撃を与えた。日本株は1300円暴落し、為替は一時1ドル99円台にまで上昇した。まさに未曾有の出来事となった。

 

評論家達がいろいろなことを発言している。面白いと思ったのは、日本総研理事長の寺島実郎氏のご意見である。要は、EU離脱はロンドンの金融街シティーがEU離脱に舵を切った結果というものである。が、これを聞いて、少なくとも私は「シティーがEU離脱に舵を切った?????」であった。

 

彼の論では、シティーがEU離脱に走った理由は、EUの規制がシティーが金融ビジネスを進める上での束縛でしかなかったというものである。また、EUがケイマン諸島に代表されるタックスヘイブン(ケイマン島やバージン諸島)での取引の透明性を高めるルールを検討していること、および金融取引税の検討を始めていることが、世界の金融市場の中心であるシティーにとって、ことさら邪魔でしかなかったという訳である。

 

寺島氏の持論は本当でしょうか。私はそうは思わないし、むしろ逆だと思っている。そもそも、EUの中で金融センターとしてのロンドンの地位はこれまでも低下傾向にあり、市場はフランクルフトに移ってきた。EUの通貨はユーロであり、欧州中央銀行はフランクフルトに置かれている。世界最大のデリバティブ取引量を誇るのもフランクフルト(Eurex取引所)である。この点で、英国がUEから離脱することは、世界の金融センターとしてのシティーの地位をさらに危うくすることに繋がる。そもそもシティーはコスモポリタンの街であり、EU離脱の背景にある強いナショナリズムとは対局の世界である。

 

金融への悪影響で言えば、離脱を決めた624日の為替の下落は、ドルに対してポンドは7%安であったが、一方ユーロは3.3%の下落で済んでいる。つまりポンド離れの方が遙かに大きかった。

 

さらに、銀行がロンドンから大陸に逃避する動きも出始めている。25日のBBCによれば、「欧州金融最大手の英HSBCホールディングスがロンドンの本社に勤務する従業員のうち最大1000人をパリに異動させることを検討している」と報じた。EUのルールとして、加盟国のどこか1カ国で免許を取ればEU域内のどの国でも支店の開設と営業活動が可能である(いわゆるパスポート制度)が、もし英国に本社を置く金融機関がこのルールから除外されれば、それは金融業としての事業戦略が根底からひっくり返ることになる。

 

寺島氏のお考えはユニークではあるが、日本のオピニオンリーダーであったはずの彼にしては、少々??????なお話であった。

 

 

 

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