日本はまだ経済大国かもしれないが、もはや経済強国ではない
(2015/12/26)
日本は米国、中国に次ぐ世界第3位の経済大国である。それは正しい。しかし、なぜ第3位なのかと言えば、理由は簡単。単に人口が多いからに過ぎない。先進国の中で1億人を超える人口を有するのは、日本を除けば米国だけである。ドイツは8100万人、フランスは6400万人、英国は6500万人に過ぎない。
日本は経済大国であると言ってはみたものの、それは人口12億人を抱える中国が世界第2位の経済大国の地位を確保していることに類似する。決して、1人あたりで見た経済力が強いわけではない。先進国の中で日本経済のパフォーマンスは相当低い。1人あたりに換算した経済の強さで言えば、現実は先進国中の「並」以下と言うことである。
今朝の日本経済新聞に「昨年の1人あたりGDP 日本転落、OECD20位」と、ちょっと驚き、そして自嘲的な見出しで記事が出ていた。そのとおり。日本の地位はOECD34カ国中20位にすぎない。イタリアを除けば、欧州の主要な先進国に全て抜かれている。それもかなりの差を付けられて。しかしそんな話は、ちょっと経済の知識があれば誰でも知っていることである。
さて、安倍首相は一億総活躍、経済を活性化させGDP600兆円の達成を目標にすると打ち上げたが、私は相当悲観的なお話しだと思っている。老齢者の人口比率が今後も増加し続けるなかで、1人あたりの付加価値生産を上げることは並大抵ではない。いくら一億総活躍と言っても、老齢化世代のできることは若い人への負担を少しでも軽減して生産に関わりましょうといった程度でしかない。
余り自虐的な話ばかりしていても、先が暗くなってしまう。日本が目指す所は何処なのだろうか。日本の人口構成や社会のあり方を考えれば、経済の大小や強弱で競う時代はもう過ぎてしまった。中規模の経済で、どうやって国民の経済水準を維持し、そして他の国から見ても魅力的な国を目指したいのか模索すべきと思っている。人口規模は小さいが、スイスなどは良いお手本になるだろう。かつては老大国と言われたイギリスも、お手本の一つになるかもしれない。
日本にはイギリスの経済を低く見ている人も多いようであるが、1人あたりGDPでは日本を25%上回り、経済成長率も2015年には実質で年率2.7%を予測し、UE圏では高い。前述の日経新聞の記事では、20位のランキングに落ちた理由の一つに為替レート(弱い円)をあげているが、今のレートが今の実体経済である。言い訳じみた説明はいらない。日本の付加価値生産性が低いままに留まっていることが最大の理由である。