時代に取り残された航空行政のツケ 2010.321

 

つい先週であっただろうか。茨城空港が開港したが、定期便はこの4月から予定する2路線しかなく、空港ビルはすでに年間2000万円の赤字を見込むという。建設を進める際に作った需要予測年間80万人に対して、実施の利用者は20万に程度にとどまる(読売新聞2010315日)。別に珍しい話でもなく、昨年6月に開港した静岡空港も、静岡県は今年度の赤字は35000万円に上り、来年度も同じくらいの規模の赤字に陥ると発表している(産経新聞2010318日)。

 

ついでにもう一つ。国交省が発表した「2008年度の国内線利用実績」によれば、全国98空港のうち、需要予測を上回ったのは羽田、名古屋、熊本、那覇など8空港にとどまる。予測と実績が明確に比較できる72空港では1/3以上が予測値の半分以下であったという(東京新聞2010311日)。

 

驚くにはあたらない。空港に限らず、高速道路建設でも明らかなように、そもそもこの手の需要予測はでたらめである。建設を進めたい地元の利権とそれに乗っかった国交省が予算を取るためにつじつま合わせの数字を作り、それにもっともらしい説明を加えたモノが、いわゆる彼らの言う「予測」である。

 

私が以前勤めていた会社でも同様なお話があった。国交省からの委託で水の需要予測作りという調査があった。本音としては、国交省はダムを造りたいので、それに見合った水需要の予測が欲しいわけである。しかし、この調査に携わった研究員は困った。まともに予測すると、水はもうこれ以上いらない、つまり新しいダムは必要ないというわけである。その旨を国交省の担当者につたえると、「そんなことは許されん。これこれの数字が出るようにつじつまを合わせろ」と、しかり飛ばされてしまった。

 

こんな話を書くと、国交省から証拠を出せと迫られそうであるが、公共事業の需要予測と実態の乖離のひどさを示したデータは、インターネットでちょいと検索すればごまんとと出てくる。それでもお役人は、予測と実態の乖離をいろいろと言い訳するが、数字は正直である。役人の言い訳を信じるか否かは、皆様の判断次第。

 

話が拡散してしまったが、人の金(自分の懐は痛まない補助金という名の税金)とばかりに、これまで空港建設にばらまいてきた莫大な負債のツケがこれから国民に回ってくるという現実である。地元の方には申し訳ないが、これから払う県民税で尻ぬぐいすることになる。もっとも、県に財政負担能力がなければ、さらに国がその尻ぬぐいをして、最終的には国民にツケを回すことになる。

 

そもそも、この狭い国土に98の空港があるというのも驚きであるが、有象無象の地方空港を採算に乗せるだけの輸送需要があるはずがないのは、わかりきっていたことである。

 

 

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