まずは、出だし順調な安倍政権 (2013/3/5)

 

 

政権交代後、確かに株価はすご勢いで上がり、ついこの間まで、1ドル70円台にまで上がっていた外国為替も、一気に90円台に下がった。経済の実態はどうであれ、ムード先行で、何となく景気が上向きそうな雰囲気にはなっている。とりわけ、安倍首相の目論見通り、黒田現アジ銀総裁を次期日銀総裁に任命することで、民主党の合意に見通しが立ち、ここ数日、株価はさらに上がり続けている。

 

一方、外交面からは、オバマ大統領との会談を通して、鳩山政権でガタガタになってしまった日米関係を概ね回復することが出来た。この点では、対米外交の立て直しをそつなくこなしたと言える。今もって振り返れば、普天間基地移転問題で、移すの移さないのと、姑息な対応を繰り返し、挙げ句の果ては、オバマ大統領との会談で、自分の立場で出来ることと出来ないことの見極めすら出来ないまま、「trust me」と言ったといわれる当時の鳩山首相の行動はあまりにもひどかった。

 

政治的には非常に敏感な問題となっている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)については、阿倍・オバマ会談に先立ち、農業団体の猛烈な反対と夏に控える参議院選挙を睨んで、「例外なき関税撤廃が前提条件である限り交渉には入らない」という言葉以外、何も語らず、非常に慎重な姿勢を貫いた。彼の本心からすれば、TPP交渉に参加しないなどという選択肢はなかった筈である。が、反対勢力に足下をすくわれないよう、細心の注意を払い、最終的には自民党内で、交渉参加の判断は首相に一任という形で納めることに成功した。

 

とりあえずここまでは順調に進んだ安倍政権であった。しかし、外交問題で言えば、対中国、対韓国問題でギクシャクし続けている現状をどのように納めるのか、まだ先が見えない。

 

習近平総書記の体制に変わって初めての全人代会議が今日から始まった。入ってくるニュースによれば、初日の温家宝首相は、政治活動報告の中で、国家主権と領土問題では譲歩しないと述べている。言うまでもなく、この裏には尖閣諸島問題がある。一方、韓国の朴槿恵大統領は、麻生副首相との会談で、「日本は被害者の苦痛を理解する立場に立ってほしい」と述べたと報道されている。これまで右よりとも見える言動を繰り返してきた安倍首相が、中韓という重要なアジア外交でどのような成果を手にするのか、これからが勝負となる。

 

話は戻って、景気の回復であるが、円安になったことで、輸入品の価格が上がり始めている。ガソリンはすでにじわじわと値上がりしており、小麦を使った食料品、紙製品についても、業界は値上げを発表した。問題は、庶民の収入が上がるかどうかである。これは、雇用状況がどれだけ改善するか、産業の生産性がどれだけ向上するかにかかっている。所得の増大に結びつかなければ、アベノミクスは、物価だけが値上がりするスタグフレーションで終わってしまう懸念は大きい。

 

 

 

 

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