夏の参院選対策——年金受給者への5000円給付 (2022/3/25)
新型コロナウイルス対策の名目で年金生活者に給付金を支給しようという政府与党の動きに対して、批判が出ている。マスメディアの中では、日本経済新聞が論陣を張っている1/。
まさにそのとおり。この給付、7月の参議院選挙目当てのバラマキである。政府自民党が、選挙が近づくと僅かな金をばら撒くのは今に始まったことではない。
この給付を提案した与党議員は、2022年度は年金支給額が0.4%減額されるので、その埋め合わせだと言うが、実質額で目減りはしていない。なぜならば、年金支給額はマクロ経済スライド2/で調整されるのだから、調整後の名目額が増減しても、実質額(実質価値)は同じである。
そもそも年金支給額をマクロ経済スライドで調整することは、2004年の年金改革法で決めた話である。ところが、与党はその実施にあたり名目支給額は前年度を下回らないという特例を作ったことで、マクロスライドは機能せず、実質支給額は上がり続けた。
年金改革法が目指した目標は、当時の所得代替率3/60%を2020年代前半に50%まで下げて、安定させることであった。では、これが達成できなければ何が起きるのか?答えは簡単。これまで積み上げてきた年金資金を食い潰していくだけである。つまりは、将来年金が破綻するということである。それを避けるには、若い人の年金負担を大きくし、そして彼らの支給額を下げるしかない。早い話、将来世代への問題の付け回しである。
若い人は棄権などせず、是非、投票所に行こうではないか。さもないと、政治は「シルバー民主主義」で決まり、ますます世代間格差は広がっていく。
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『[社説]与党は選挙のたびに給付金を配るのか』(日本経済新聞2022/3/19);『年金を台なしにする5000円給付 実現なら大失政に』(日本経済新聞2022/3/23)
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その時々の賃金物価動向で名目額は上がり下がりするが、賃金物価動向で調整しているので実質受給額は変わらない。
3/
「所得代替率」とは、年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示すもの。