盛り上がらない2020年五輪招致 (2012/10/23)
東京が招致する2020年オリンピックの話題が、マスコミでも結構取り上げられるようになってきた。石原都知事は、2016年の招致に失敗しただけに、相当な思い入れがあるとみえる。が、その反面、国民の盛り上がりは、今一つといったところであろう。
招致を表明している5都市、バクー(アゼルバイジャン)、イスタンブール(トルコ)、ドーハ(カタール)マドリッド(スペイン)の中で、総合評価で東京が有力と伝えられるが、国民の五輪開催に対する支持率は、5都市の中で一番低い。バクーは90%でトップ、第4位のマドリードでも75.3%の支持があるが、東京は65%の最下位。要は、国民の関心が今一つといったところだろう。
私も、個人的には、いまさらなぜ東京でもう一度オリンピックなのかという気がしている。前回の招致では、国内では福岡が東京と争った。東京以外の地方都市が手を挙げるのであれば、それなりに意味もあろうが、今回はそれもなかった。東京は日本の顔だ、といいたいのだろうが、アジアに限ってみても、東京はもはやナンバーワンの都市ではない。かつてはアジアの拠点として東京を選んだ海外の国際企業も、今は上海、香港、シンガポールを選択している。日本国内では、東京でなければ、何もできないと思っているが、アジアの中では、いつの間にか、端っこに追いやられ始めている。
理由は簡単。日本の論理だけしか通用しない殻に閉じこもり、グローバル化できないまま、最盛期を過ぎてしまったためである。バブルの頃は、ニューヨーク、ロンドンと並ぶ金融センターを自称したが、今やその面影もない。東京市場で上場している外国企業の数を見れば情けないほどの結果でしかない。一過性の五輪招致で、経済が抜本的に回復できるわけではないし、もっと根本的に、インフラを含めた日本の社会システムを変えることを考えた方が将来のためである。
そもそも今の日本が抱える最大の問題は東京一極集中が解消されないまま、国の勢いが衰えつつあることにある。いつ来るかいつ来るかと慄いている東京直下型地震の抜本的な対策ができないまま、さらに東京に投資したところで、ますます一極集中のリスクを高めるだけである。自然災害から日本が逃げられないならば、国を多様化させ、都市機能を分散化させる方が、よほど理にかなっている。
さらに、五輪誘致で常について回る不正経理の疑惑が、東京でも発覚した。前回の五輪招致で、特命随意契約で発注した事業費の経理書類が一切消えてしまった。実は、これと同じ話が、長野が冬季オリンピックを誘致した時にも起きている。19億5000万円也の会計簿が故意に廃棄された。要は、監査請求されたらまずいので、招致委員会が証拠を隠滅してしまったという、例の事件である。これは、委員会が任意団体であるという理由で、当時の長野県知事や県職員の責任を追及しないまま、闇に葬られた。今回、東京都は、〆て18億円也の経費書類が「あら不思議、消えてしまった」と他人事のように言っているが、そんないい加減な話ならば、五輪招致など止めておけと思う人は多かろう。